異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



セリス王子が先に馬車から降りて、こちらへ手を差しのべてきた。


「どうぞ、手を」

「……」


あたしは何も言えないまま、彼を見ることもできずに手を載せる。ミス・フレイルの訓練通りに空いた手でドレスをさばき、ゆっくりと段差を降りた。


そして、あたしの侍女としてミス・フレイルと護衛のロゼッタさんが後ろに控えて。セリス王子の護衛としてハルトが彼に並ぶ。侍従長や女官らしき人たちもいたけど、さすがに名前は知らない。


パーティー会場となる専用のホールは水晶宮殿の中央にあって、外には見事な庭園と湖が見える全面ガラス張りの空間。よく晴れている今日はきっと夜になれば綺麗に星が輝いて見えるだろうな。


セイレム王国は夜になるのが遅い。まだ5時の今は昼間と変わらずに明るいから、夕方って感じはしない。


左右に仰々しいくらいの正装をした近衛兵が整然と配置され、その真ん中に敷かれたレッドカーペットを歩く。セリス王子の腕を取ったまま、なるべく静かに歩こうとしてるけど。


……歩きにくい。


プリンセスラインのドレスはスカートが綺麗に見えるけど、重いから大変。皆さんよくこんなの着て毎日暮らせますわ。


それに、スカートが足にまつわりついて。パニエは柔らかい素材にしてもらったから、そのままスカートの動きがダイレクトに足にくる。ちょっと! また、もつれそうなんですけど。


必死に足を動かしていると、プッと息を吹き出す声が隣から聞こえましたけど!


< 320 / 877 >

この作品をシェア

pagetop