異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。





何とか無事に会場に入り終えたあたしは、ホッと胸を撫で下ろした。にしても……みんな綺麗な格好してんだな。って思わずきょろきょろと見回すと、「おっほん!」 とミス・フレイルの咳払い。


はいはい、はしたないって言いたいんでしょ。ってげんなりしながら視線を戻した。


(みんな綺麗。目付きはキツイけど美人だって多いし、なんでセリス王子は婚約もしなかったんだろう?)


素朴な疑問を感じながらも、ミス・フレイルに見つからない程度に目を動かす。


なんでだろう? あたしは……誰を探してるの?


その必要なんて、ないじゃない。バルドはあたしじゃなくって、アイカさんを選んだ。


異世界から来た偽物の婚約者なんかより、幼なじみで最愛の人を優先するのは当たり前。バルドがあたしを選ぶ必要も、理由もない。


それにあたしだって、必要だからと渋々エスコートされるより、ちゃんとあたしを選んでくれる人がいい。


身の程知らずってわかってる。現実にあり得ないってことも。


だけど……いいじゃない。


みんな、みんな。誰かに想われてるんだから。大切にしてもらってる。愛されてる。必要とされているんだから。


あたしには、何もない。


日本へ帰ったって。待ってくれる人は一人もいないんだ。唯一のセリナはこちらの過去へ飛ばされてしまうんだから。


あたしを待ってくれる人も、大切にしてくれる人も、想ってくれる人も、愛してくれる人も、本当の意味で必要としてくれる人もいない。


だから……


今、この時くらいはほんの少しでも誰かに必要とされたい。ただそれだけだった。


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