異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
セリス王子のもとへは挨拶しにくるお客が絶えない。さすがに第一王子だから、無視できない人が多いんだろうな。
で、当然あたしも挨拶する流れになるんだけど。どこかの令嬢か訊かれてもセリス王子が「母の遠縁の娘さんです」と曖昧にごまかしてくれるから助かった。
それでもまつわりつく好奇心旺盛な視線、棘が刺さるような鋭い睨み、値踏みするようなあからさまにじろじろと見る目。
いろんな視線を受けて、次第に疲れを感じる。
でも、一律にこれだけは言えた。
“コイツは王子に似合わない”とみんなが考えてるって。
(そんなの、わかってるよ。がさつなあたしはどんな男性にだって似合わない。選ばれるはずないって。自分が一番わかってるんだから)
“なんでこんな女がここにいるんだ?”
場違いなことを責められているような気がして、涙が流れそうなのをグッと堪える。
重くなる気分を抱えながら、適当に頭を下げながら挨拶をしている最中。クウ、と小さくお腹が鳴って、慌ててそこを押さえた。
朝方セイレム王国に到着して、昼前にお茶会のお菓子をつまんだ程度だから、お腹がすいてたんだけど。支度の忙しさや緊張で忘れてた。
大丈夫だよね。これだけ賑やかなんだから、小さな音に気づかれないはず……と思ってたんだけど。
やっぱりセリス王子は耳聡くて。クスクス笑いながらあたしの手を取った。
「和さん、先にお料理をいただきましょうか」
「はぁい……」
蚊の羽音より小さな声で返事をして、セリス王子のエスコートでお料理の並ぶテーブルへ向かう。
現金なことに、色とりどりのスイーツやお料理を見た途端、あたしの気分は急上昇しました。