異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「これはいかがですか? ふわふわの食感が楽しめますよ」
「お、美味しそうですね……?」
語尾が思わず疑問形になりながらも、あれ~? とあたしは首を捻りました。
あたしのお皿はいつの間にかセリス王子の手に渡り、彼はあたしに訊ねながらお料理を取ってくれてますけど。
あの……セリスは仮にも王子殿下なんですよね? なのになんで、あたしの給仕をしてるんですか!?
「この小魚は特産の香辛料を使ってます。香りも味も絶妙で、おすすめですよ」
「美味しそう……じゃなくって。ちょ、ちょっと待ってください!」
お皿を取り戻そうと手を伸ばしながら、セリス王子に止めに入った。
「どうかなさいました?」
「あの、自分で取りますから。わざわざ王子殿下の手をわずらわしたくありません」
「気になさらないでください。この国では男性は女性に仕えるもの、という習慣がありますから」
「そ、そうなんですか? けど、それでも王子様にそんな真似をさせるのは」
「わかりました」
セリス王子が空のお皿を差し出すから、ホッとして受け取る。さあ、取ろうかと張り切った時。セリス王子はにっこり笑う。
「それでは和さんがわたくしの分を盛りつけてください。これでおあいこですよね」
「うっ……」
有無を言わさない威圧的な笑顔に、断る術もなく頷く他なくて。結局、セリス王子とああだこうだ言いながら選んでいると、あっという間にお皿がいっぱいになった。