異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「あ、和! お~い」


バタバタと手を振りながらぴょんぴょんと跳ねてるのは……他の誰でもない、セイレスティア王国王太子妃のユズでした。


彼女はうっすらと薄い桃色か白か、という微妙な色のドレスを着ていて、頭には王太子妃の象徴であるティアラを飾ってる。

また、ライベルト辺りのお小言を喰らいそうなのに懲りないなあ、と苦笑いしながら待ってると。


あ、こけた……と驚く前に。彼女のお腹にがっちりと回ったのは、ティオンバルト王太子殿下の腕で。彼はそのままユズを抱き起こす。


わ~、片手で楽々。やっぱり男性って力があるんだなぁ……なんて感心しながら見てたら。何だかユズと王太子殿下が揉め始めた。


眉をひそめるティオンバルト王太子殿下と、むくれて頬を膨らませたユズ。結局ユズの主張が通ったようで、彼女は嬉々としてこちらへやって来た。


「和、やっと会えた! ね、どんなお料理がおいしいの? セイレム王国のお料理って初めてだから、すごく楽しみだったんだ」


少しはお淑やかにしなくていいの? と思わないでもないけど。同じ日本人の女の子同士という気安さで、彼女があたしと話したがる気持ちもわかる。


1年近く彼女は同郷の人に会えなかったんだから。懐かしくてたまらないんだろうし。


それに、あたしもユズと知り合えて嬉しいし。彼女と話すと異世界のことを忘れられて楽しかった。だから、お皿を持った彼女と歓談しながらお料理をいただくつもりだけど。


その前にとティオンバルト王太子殿下に挨拶をした。


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