異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ティオンバルト王太子殿下ですね。先刻はご挨拶もできずに失礼致しました。
わたしは秋月 和と申します。今はディアン帝国にお世話になっています」
「キキやライベルトから話は聞いてる。私はセイレスティア王国王太子のティオンバルト・ルラ・セイレスティアだ。お茶会ではずいぶんとユズを楽しませてもらえたようで、感謝するよ」
「いいえ、こちらこそお相手していただけまして。楽しいお時間を過ごさせてもらえました」
ティオンバルト王太子殿下は案外気さくな方で、全然堅苦しくない。こちらを気遣う優しさも持ち合わせてて、こりゃあユズは幸せになるなと直感した。
「ユズは何も言わないけど、彼女が故郷を懐かしく思ってるのは知ってる。あなたがよければ、時折話をしてやってくれるとありがたい。あなたも一人で不安だろうし、お互いのためになるだろう」
「は、はい。こちらこそ。もったいないお言葉をありがとうございます」
ほぼ初対面なのにそこまで考えて下さる思い遣りに触れ、心がぽかぽかして頬が熱くなる。ユズって、本当に愛されてるんだなあ。うらやましいけど、きっといろんなことがあって、築き上げた2人の信頼なんだろう。
たしかに、ティオンバルト王太子殿下はあたしが会った男性の中では一番の美形だろうと思う。けど、ときめいたりはしない。
彼がユズのものだからという以前に、あたしもイケメンなら誰にでもドキドキする訳じゃないと解って安心した。