異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「それは、あなたが伝承にある巫女だからです」
後ろから澄んだ水のような声が聞こえて振り向けば、そこにいたのは銀色に輝く20くらいの男性。
銀髪の長い髪を背中でひとつにくくり、白い細面に蒼い瞳は湖みたいに澄んでる。華奢で白いローブのようなものを身につけているけど、骨格や声の質から男性ってのは十分にわかった。
優しげな風貌で微笑む顔はとてもとても整っていて、いわゆるイケメンってやつ? たぶん、こういうあまり男性って感じがしない美形は現代日本じゃモテるだろうな、ってなんとなく思った。
というか……この人、日本語喋った!?
驚いて目を見開いたあたしに、ニコリと笑いかけたその人は自らの素性を明かしてくれた。
「お初にお目にかかります、わたくしはディアン帝国第二皇子、セリス・デ・ディアンと申します」
「……は?」
自分が皇子って名乗るって、何言っちゃってんのこの人って感じ。日本にも皇族の方々はいらっしゃるけど、お会いしようとしてお会いできる存在じゃない。だから、全然現実感がないのに。 こんなにあっさり会えるものなの?
しかも、皇子であろうその人がその場で膝を着いてあたしに頭を下げるって。そんなに軽い頭なの??
「水無瀬の巫女よ……どうか、このディアン帝国をお救いください。この大陸は先年よりの干ばつに苦しめられ、餓死者は増すばかり……どうかそのお力で、この地に恵みを」
「へ、は? あたしが巫女って……何かの間違いじゃないですか?」