異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ひそひそ、と話し声が聞こえてきたのは泣き止んでしばらくして。
え、誰か来た? 慌てて灌木の茂みに入り込み、体を小さくして通り過ぎるのを待とうとしたんだけど。
遠ざかるどころか……近づいてくる!? ちょ、ちょっと! こんな顔を見せたくないんですけど。
まだ見つかりたくなくて息を潜めていると、近くの茂みががさがさ揺れた?
あれ? あたしを捜しに来たんじゃないの? と不思議に思っていると。
あれれ? 何やら物音が聞こえてきた。ごそごそと小枝にぶつかる音と……衣擦れの音? それから。
「あ……」
だなんて。女性の吐息のような、色が含まれた声が聞こえてきましたが!
ちょ、ちょっと。あたしの1mほど横で茂みに入り込んで、いきなり何を始めたんですか! 気のせいじゃなく、チュッチュッする音や色めいた声が耳に入ってきます。
や~め~て~! 何かふんか~とお二人さんの鼻息荒いですよ! 頼みます。カレシいない暦=年齢のぼっちなあたしには、刺激が強すぎますよ。
おろおろしながらも、それ以上聞きたくなくて耳を塞ごうと両手を上げた瞬間。パキッと小枝が折れる音を立てるのはお約束ですね、はい。
当然、茂みの二人様は動きを止めて。しばらくごそごそした後に黄色いドレスを着た女性が慌てて走り去っていきました。
ごめんなさいね……KYなあたしで。と半目になりながらそのまま動かないでいると、突然目の前に人の顔が現れて呼吸が止まりそうになった。
「ぎゃっ!?」
「ぎゃって……俺の顔見てそう叫ばれたの初めてだわ」
ポリポリと青い髪を掻いたのは、20そこそこの男性で。濃い緑色の軍服を身につけてた。