異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
けど、その手は突然そっと包まれた。
「苦労してる手だよね」
目の前の男性に言われて、やっぱりわかるんだって涙がこぼれる。
「や……っぱり……男性って……こんな、太くて荒れて豆だらけの厚い手なんて、嫌……ですよね」
知らない人だからこそ、かもしれない。素直に気持ちを言えたのは。少しでも知っていたなら、あたしは口にすることもなかった。
「ま、普通はそうだろうな。そりゃ外見をいいのを優先して選ぶよ」
「……」
歯に衣着せぬ言い方に、現実を知らされて気分が落ち込む。やっぱり、異世界でも日本でも。あたしを好きになってくれる人なんて……とうつむくと。なぜかその人は、あたしの指を優しく撫でる。
「でもね、俺は苦労してる人が好き」
「え?」
「そりゃ外見は良いことに越したことはないけどさ。俺は外だけ飾り立てて、中身がすっからかんなら要らない。たとえ世界一の美女だってお断り」
「……はあ」
急に何を言い出すんだろう、この人は? ぼんやりとそう思って見てると。男性はだから、とあたしをまっすぐに見据えた。
「だから、さ。俺はあんたみたいなのがいい」
「は?」
ザッ、とその場で膝を着いた男性は、左手を心臓の位置に当てて畏まった表情をした。
「俺はルーン王国第一王子、カイル・リ・ルーン。あなたに正式に結婚を申し込みたい。まずはお名前を教えていただけますか?」
「……は?」
いきなり過ぎる出来事に、頭も何もかもが真っ白になりました。