異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「やだ」
カイルは即座に断りやがりましたよ。
「だから、何でよ!」
「言っとくけど、俺、プロポーズ自体初めてしたんだけど」
「意味がわかんない。会って30分でプロポーズってあり得ないでしょ! こういうのはお互い時間をかけて愛情を育んでから、が当然でしょ! インスタント食品じゃあるまいし。30分で決めないでよ」
「ルーン王国はみんなフィーリングで決めてるから問題なし。俺はこれでも人を見抜く目は持ってるつもりだよ。代々の王家の人間はその能力が抜きん出てるから、腹黒いやつとか猫かぶりとかすぐ解っちゃう。
だから、裏切りそうなやつとか即判断できるんだよね」
「……」
「あ、なに? その疑わしそうな目。よし、俺の力を見せる為に会場にいた中で一番腹黒いやつを当ててやるよ」
「どうでもいいんだけど、早く指輪外してよ」
なし崩し的に指輪をつけたまま、パーティー会場に戻りたくなんかない。手袋をしても形でわかるだろうし。セリス王子に見とがめられるかな?
(……ってそんなはずないか。セリス王子はあたしが母の親友ってだけの関わりなんだし。今ごろは面倒くさいやつがいなくてせいせいしてるかもしれないな)
ちょっと落ち込みながら何とか指輪を外そうと奮闘してると、カイルはとんでもないことを言い出した。
「招待客の中ではディアン帝国のハルバード公爵夫人が一番腹の中が真っ黒だよ。どす黒いくらいだね。もしも関わるなら最大限の警戒を忘れないでよ」