異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「は? やっぱり悪い冗談ばっかりじゃん。それじゃ信用なんてできないし」
バルドが愛してる人が腹黒いだなんて。口から出任せにしても、さっきのプロポーズよりも遥かに質が悪すぎる。
「なに? 信じてないって顔してるけど、それじゃああんたはハルバード公爵夫人をよくよく知ってるから、否定するの?」
「……それは」
知ってるどころか、本人を見たのさえさっきが初めてだ。それじゃあ説得力に乏しいし、根拠なんてない。
バルドのことだって。あたしは理解しきれてるとは言い難い。第一、カイルにあたしの気持ちをわざわざ教えるつもりなんてないんだし。これじゃあカイルの発言には、否定も肯定もできないな。
だけど……だけど。
バルドは、あたしが好きになった人だから。その彼が愛した人を信じたい。バルドの目が節穴だなんて、思いたくない。
「よくは知らない。でも……」
草の上で座り込んで膝に置いた両手をギュッと握りしめ、勢いよく顔を上げた。
「あたしは……信じる。大切な人が信じてるひとを、信じてる」
あたしがきっぱりと言い切ると、カイルが腕を組んでう~むと唸る。
「あんたがそんなに言うなら……難しいねえ」
うむむと唸りながらも、カイルはポンと手を叩く。
「そうそう。とりあえず、会場に戻った方がいいんじゃない? 今ごろ従者や護衛が慌てて大騒ぎしてると思うけど」