異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「和!」
出てすぐに、セリス王子の声が上がった。
彼はあたしのもとに駆けつけてくると、息を切らしながらあたしの手を掴んだ――と思った瞬間。
グイッ、とその腕が引かれてバランスを崩すと、セリス王子の胸に顔が当たる。彼はそのままあたしの後ろ頭に手を回し、ギュッと抱きしめてきた。
「よかった……無事で」
顔を押し付けられて聞こえてきたセリス王子の鼓動は、どくどくと速い。いつもは汗ひとつかかないのに、ポタリと落ちてくるのはそれだけ動いたからだろう。
彼の鼓動ほどではなくても、あたしの心臓も少しだけ速くなる。爽やかなミントの香りに包まれて、なぜだか勝手に涙がにじんできた。
少なくとも、セリス王子は本気で心配してくれた。これだけ彼がちゃんと捜してくれたと知ったら、何だか申し訳なくて。胸がズキッと痛んだ。
「ごめんなさい……勝手に庭に出て」
「いいえ、わたくしの配慮が足りずに申し訳ありませんでした。あなたがご無事で何よりです」
そう話してそっと離したセリス王子は、どうしてか怪訝そうな顔になる。たぶん、あたしが足を庇ってたからだと思う。
「足を、どうかなさいましたか?」
「あ、ちょっと転んだだけで……大したことありませんから」