異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「少しだけ、診せてもらってよろしいでしょうか?」

「えっ……」


さすがにセリス王子が相手でも、ドレスを捲って足を見せるのは恥ずかしい。そんなあたしの気持ちに配慮したのか、セリス王子はあたしを近くのベンチに座らせた。


「どんなケガであれ、早く手当てするに越したことはありません。足を引きずったりしたくはないでしょう?」

「う……はい」

「すぐに済みます。治癒魔法を使いますから」


セリス王子はあたしの前に膝を着くと、「失礼します」とスカートの裾に触れる。それだけでドキドキと胸が鳴って、逃げたいような気持ちになってきた。

自分で捲って太い足首を晒すのも嫌だけど、異性に捲られて見られるだけじゃなく触れられるなんて。

恥ずかしい。恥ずかしくて死にそう。


頬が熱い。絶対、顔が赤くなってるよ。


セリス王子はたぶん気遣ってくれてるんだろう。スカートを上げたのはわずか数センチで、捻った足首をすぐに見つけた。


けどどうしたことか、セリス王子はスカートを捲ったまま数秒間足首を凝視してる。


も、もしかして足首が太すぎてあきれました? すいません。立ち仕事のバイトや歩きっぱなしの生活をしてたから、ほっそり美脚とは無縁で。こんな足を晒してごめんなさいと卑屈になってたけど。


「……誰かと一緒にいましたか?」


低い、低い問いかけがセリス王子の唇から出た。


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