異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
で、侍従さんの目は当然あたしにも向けられた。
『この方は?』
『あ、俺の妃になる予定のひと』
『は?』
侍従さんの目が点になるのも無理はないって。見たこともない女が妃になるって言われたら、誰だってぽかーんとするでしょうよ。
「か、カイル王子! そのお話はお断りしたはずです」
「けど、指輪受け取ってくれたじゃん。説得力ないんだよね~」
あたしが猛抗議したところで、馬耳東風なカイル王子は飄々とした態度を崩さない。
「あ、あれは。あなたが騙し討ちみたいに……」
「俺は、外すつもりはないからね。和」
「は……?」
カイル王子に名前を呼ばれたことに、耳を疑った。
あたし、彼に名乗ってないよね? 自分の名前を出してもない。挨拶の時に彼がいた記憶もないし。いったいどうして名前を知ってるの?
あたしの疑惑の眼差しを受けたカイル王子は、チラッと横目でセリス王子を見た。
「言っただろ、俺はセリスの幼なじみだって。セリナ王妃とも懇意だから、ずっとあんたの話を聞いて育った。だから、気まぐれとかじゃない……セリスと同じようにね」