異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
そう話すカイル王子の瞳はどうしてか、パーティー会場に向けられてた。彼は何を見てるんだろう?
それよりも、と胸を押さえる。
生まれて初めてされた告白が、王子様だったなんて。信じられないし夢みたいだ。
ふわふわと足元がおぼつかないし、膝から力が抜けそう。心臓が狂ったようにドキドキしてるし、顔と全身がカアッと熱い。
こんなに……嬉しいものなんだ。
誰かに、好きだと言ってもらえる幸せ。あたしだから、必要としてくれる幸せ。
きっと、間近に大切な人がたくさんいる人にはわからない。たったこれだけのことが、どれだけ奇跡的で幸せなことか。
一生、ないと思ってた。
ポタリ、と頬を伝い落ちた涙がドレスを濡らす。カイル王子は苦笑いしながら、ハンカチを出してあたしの頬を拭こうと手を伸ばしたのだけど。
その動きは、違う人の手で遮られた。
「……カイル、あなたはもう会場に戻りなさい。挨拶もろくにしてないのでしょう」
「貴族どもにおべっかなんて使いたくないんだがな」
カイル王子はセリス王子の顔を見て、やれやれといったふうに肩を竦める。あたしからはセリス王子の顔が見えないから、彼がどんな表情をしているかがわからない。
「しゃ~ない。おまえをこれ以上怒らせる前に、素直に会場に戻るわ」
と言いつつも、彼は背中越しに意味深長な言葉を残した。
「和、気をつけろよ。セリスは怒ったら一番おっかないやつだから」