異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ひらひらと手を振るカイル王子だけど。
パキッと軽い音がしたかと思えば、彼に向かって銀色のものが投げつけられた。
「忘れ物ですよ」
「……って、おい!」
カイル王子が手に受けとめたものは、あたしがしていたはずの指輪だった。
「マジか……解呪なんざ到底無理なのに。おまえ……」
「カイル。これ以上僕を怒らせたくなかったら」
「わ~った、わ~った! おまえのターンを邪魔するほど野暮なつもりはない。せいぜい頑張りな」
じゃ、と制服のポケットに指輪を放り込んだカイル王子は、侍従や護衛とともに会場へ消えていった。
「あ、あたしたちも戻らなきゃいけませんよね。治療ありがとうございました」
気詰まりな空気に耐えられなくて、あたしも会場に向かって歩こうとしたけど。腕を掴まれて、そのままセリス王子に引きずられるように連れてこられた先は、湖に突き出して造られた阿室(あずまや)。
そろそろ日が暮れて全てがオレンジ色に染まる中、茜色に彩られた白い阿室は小さなテーブルと椅子が二脚あるだけ。
セリス王子はそのうちのひとつにあたしを座らせると、彼はそのまま背を向けて湖を眺める。
あたしは黙ったまま、セリス王子の出方を待つことにした。話があるのはなんとなく分かったから。
魔法の光だろう淡い灯りがぼんやりと輝くころ、やっと彼は口を開いた。