異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「帝都からここまでどれだけ離れていたのですか?」
「30モーグルほどですね」
「……って言われても。あたしが知らない単位だわ」
チラッとレヤーを見ると、焚き火にあたってた彼は「1モーグルはおそらく33kmくらいですね」と教えてくれた。
ってことは……1000km!?
ちょっと、ちょっと! それだけの距離を歩いてきたって言うの、この人は!?
華奢でとても体力があるようには見えないのに、と無遠慮に眺めていると。突然声が聞こえたけど。
「おい、なんだよこのちんちくりんな小娘は? おい、まさかこんなのが巫女って言うんじゃないだろうな?」
……ちんちくりんに、小娘? それに、“こんなの”!?
近くに女性がいない以上、それは明らかにあたしを指して言われたんだろうけど。あまりに失礼な物言いに、ブルブルと体が震えて勢いよくそちらへ向いた。
「ちょっと、人のことをちんちくりんだの、こんなのだの。失礼にもほどがあるでしょう!」
威嚇するために思いっきり睨み付けたつもりだったけど……。
それは、すぐに勢いを失った。
だって……
「あきと……おじさん?」
行方不明になったおじさんと瓜二つの男性が、あたしの目の前に現れたのだから。