異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「カイル王子に応えるつもりなのですか?」
抑揚がなく冷たく響くセリス王子の声は、感情というものがちっとも感じられない。問いかけというより詰問に感じられて、カチンときたあたしは乱暴に答えた。
「少なくとも、本気でないと勝手に決めつける誰かよりはましですから。カイル王子が本当に本気でしたら、ちゃんと考えようかと思います。
心底あたしを求めてくれるなら、誰もいない日本へ帰るよりは寂しくないですから」
セリス王子の失礼さにムカついて、挑発的な答えを返した。いくら彼がセリナの息子でも、我慢の限界はある。
「もしもあたしを巫女でなく一人の人間として見てくれるなら……その人なら、誰でも……ッ」
ふわり、と銀色が目の前に散った。あ、綺麗だな……ってぼんやりとしていたあたしの視界に、海のような澄んだ蒼が見えた。
くちびるに、やわらかいものが触れる。
あたたかい感触に身じろぎすると、背中に回された腕があたしの体を引き寄せて。いつの間にかセリス王子の胸の中に抱きしめられていた。