異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
え、何が起きたんだろう?
意味がわからなくて呆然としてると、セリス王子の切なげな蒼い瞳が降ってくる。
「……そんなことを言わないでください」
ギュッ、と苦しいくらいに抱きしめられる。顔が彼の胸に当たって、息苦しい。背中がきしむかと思うくらいに、力強く抱きしめられた。
「わたくしなら、決してあなたを一人にはしません」
「セリス王子……?」
「正直、最初はあなたを巫女だとか。母の友達というくくりで見ていたことは否定できません。幼い頃から寝物語にあなたの話を聞いていた。だから、初めてお会いしてもどこか現実味がなくて。一人の人間として見ることはありませんでした」
突然、何を言い出すんだろう? セリス王子の独白に、相づちを打つのも忘れて耳を傾ける。
なぜだか邪魔をしちゃいけないって思えたから。
「正直な話、この人? と思ったりもしました。大した力も感じませんでしたし。惹かれるものもなくて……疑問に感じながらあなたをセイレム王国へお連れしようとしました。その時全てはあなたのためではなく、母のためで。正直、あなたのことを助ける気持ちなんてついでのことでした」