異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第20関門~アイカという女性のこと。



「まぁ!」


まさにすっとんきょう、と言った表現がピッタリな声で叫んだのは、ハルバード公爵夫人であるアイカさんだった。


「バルド、いけませんわ。このような恋人同士の会瀬を邪魔しては。無粋というものでしてよ」

「……っ」


恋人、と言われたショックとキスをされたショックで、頭が真っ白になる。ただ逃れたくてセリス王子の腕を叩くけど、またキスをされそうな距離で彼が見詰めてきた。


「恋人、婚約者。あなたをわたくしのもとに縛りつけられるなら、何でも構いません。このままあなたを拐ってどこかに閉じ込められたら、一生わたくしのそばにいてくれますか?」

「……な、何を言って」

「あなたの気持ちが、どこに向いているのか。見知らぬふりができるほど、わたくしも大人ではありませんから」


セリス王子はあたしから顔を上げると、数メートルの距離で佇む2人に視線を向けるけど。鋭さを孕んだそれは、まるで睨み付けるように見えた。


「……まさかとは思いますが、あなたが和と婚約したのは、その女性と密会する隠れ蓑のためではありませんよね?」


セリス王子の鋭い指摘に、自然と体が強張る。バルドは何も言わないけど、あたしの焦燥を感じ取ったのか、セリス王子はやはりと小さく呟いた。


< 356 / 877 >

この作品をシェア

pagetop