異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「和、あなたはただ利用されているだけです。それでもあなたはあの方のそばを選ぶのですか? あの方は皇子でありながら人妻となった女性を大切にしているのですよ」
「……っ」
セリス王子は容赦なく、あたしの苦しみのもとを暴いてく。 あたしがどれだけバカなのか、あり得ないことをしているのかを糾弾して、どれほど愚かなのかを明るみにしてる。
自分でも、解ってる。どれだけバカなことをしてるかって。
皇子であるバルドが公爵夫人と不倫だなんて。とんでもないスキャンダルな上に、その醜聞はバルド本人のみならず帝国の威信も傷つけ信用を失いかねない愚行なんだって。
彼のことを思うなら、協力せず止めるべきだ。頭ではそう解ってる。婚約者なのに日の目を見ない日陰者に甘んじなきゃいけないおかしさも責めるべきだって。
でも……。
でも。
だから、なんだ。
あたしはバカだから、こんな方法しか知らない。
「……わかって、ます」
あたしはセリス王子に抱きしめられたまま、震える声で懸命に言葉を絞り出した。
「あたしは……バカだから。こんな方法でしかバルドの役に立てないんです。こんな応援しかできない……彼が、選ぶなら。彼が幸せになれるなら。あたしはそれを応援するだけ。彼のためにできることがあるならしたい。ただ、それだけなんです」