異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



アイカさんの可憐で儚い美しさは、セリス王子にもよく似合う。美男美女という表現がぴったりで、思わず見惚れてしまう。


「申し訳ありません……少しだけ胸が苦しいので、支えていただけますか?」


アイカさんは少し苦しげな顔をして、左手で胸を押さえている。しがみつくようにセリス王子の腕に掴まっていて、彼に体を支えてもらわないとキツそうに見えた。


そういえば、彼女自身が病弱って言ってたっけ?


胸を押さえるってことは、もしかすると心臓が悪いってこと?
もしも心臓でないとしても、あの位置では肺だとかだよね。どちらにしたって、放っておいていい病気じゃない。


あたしは急いでアイカさんのもとに駆け寄ると、ポケットから小さな瓶を取り出す。そして、瓶の中身を出すと空き瓶で湖の水を汲んで銀色の丸薬と一緒にアイカさんに差し出した。


「どうぞ、これをお飲みください」

「……それは?」


怪訝そうな顔つきのアイカさんは、あたしが手のひらに載せた薬を眺めても受け取ろうとしない。もしかして変なものだと疑われてるのかな? と一粒、彼女の目の前で飲み下した。


「とてもよく効く霊薬です。わたしも、ひどい怪我をした時にこれのおかげで短期間で快復しました。下さったのは……とても優しいひとです」


バルドの方を見ずに、アイカさんに話した。これはバルドの霊薬だと彼女が知っている様子はないけど、最愛の人の体調がよくなるなら彼も本望だろうって。彼女に譲ることに決めた。


あたしは病気なんてめったにならないから、病弱な彼女の方が役に立つと思って。


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