異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「あ、ありがとうございます……でも、これは特別に調合したお薬でないと好くならないのです。お気持ちだけいただいておきますわ」
アイカさんは緩く首を振って、セリス王子の胸に体を預ける。彼女の指がセリス王子の軍服を掴み、潤んだ瞳で彼を見上げた。
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません……もう少しだけ……よろしいでしょうか?」
「ええ、構いませんよ。どなたかお呼びしましょうか?」
「いいえ、大丈夫ですわ。付き人に知らせては心配させてしまいますから。もう少しだけこのままで……」
アイカさんの弱々しい微笑みは、あたしでさえ庇護欲を掻き立てられる。根が優しいセリス王子なら、尚更見捨ててはおけないだろう。
白い軍服を着る銀髪のセリス王子に寄りかかる金髪の美女。それだけで絵になりそうな美しさがあって。ため息が出そうだった。
セリス王子だって、アイカさんのような美女が間近にいれば、きっと彼女に惹かれるんだろうな。
彼の気持ちを疑ったり否定はしないけど、男性はやっぱりああいった可憐で女性らしいひとの方がいいんだろう。
きっと、あたしへの気持ちが思い込みだって気づくはずだ。