異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。




「ちょっと、バルド! 着いて行かないでいいの? アイカさんあんなに体調悪かったじゃない。パートナーだし好きな人なら、セリス王子に任せっぱなしじゃダメでしょう?」


そうだ、とあたしは閃いた。


「ほ、ほら! 今からでも追いかけるかお見舞いでもいいから、行きなさいよ。お見舞いに花でも持っていって……部屋なら2人っきりになれるでしょう?そこでちゃんと自分の気持ちを伝えなきゃ!」


あたしはいそいそと庭園のお花を幾つか摘んで、ドレスを結んでいた青いリボンのひとつを抜いて花束を作った。

庭園の花はいつでも摘んでいいってセリナの許可はいただいてる。もちろん常識の範囲内で。


花を一輪摘むごとに、胸がズキッと痛む。バルドもきっとアイカさんのところへ行くんだな、とわかってるから。


(結局、みんなみんなあたしを置いていっちゃうんだ。これが現実なんだから……仕方ないよね)


滲んだ視界を誤魔化すように手のひらで拭い、花束の青いリボンを綺麗に結びなおす。


「はい、これを持ってアイカさんのところに行って。早くしないと……」


バルドの顔を見ないようにして、彼に押し付けるように花束を渡す。これで、あたしの役割は終わり。バルドはアイカさんのところへ行くだろうから、あたしはヒスイのところへでも行こうか、と思っていたんだけど。


< 365 / 877 >

この作品をシェア

pagetop