異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「彼女が疲れたようだ。休める場所への案内を頼む」
近くに控えていた女官の一人を捕まえたバルドは、そう言って案内を頼み彼女の後を着いていく。
途中でミス・フレイルに会ったけど、バルドは喚く彼女をあたしの体調不良を理由に無理に下げさせた。
(後で謝罪してからお礼を言わないと……)
パーティー会場を飛び出したせいで、どれだけの人に迷惑をかけてしまったんだろう。今更ながら子どもっぽい行動だったな、と後悔しながらも。何とかバルドの腕の中から出ようともがいた。
でも、鎖のようにがっちりと絡まったバルドの腕は絶対に外れない。
(あたしは体調不良なんかじゃないんだけど!)
胸の中だけで文句を言いつつ、抜け出す努力を怠らない。ポカポカと軽く叩いたり、噛みついてみたり。もちろんあからさまだと人の目があるから、見えない場所で控えめにだけど。
やがて、ズラリとドアが並んだ場所に到着。女官がノックをすると、違う女官が部屋から出てきて頭を下げた。
「どうぞ、お部屋は整っております。こちらへ控えてますから、何かあればベルを鳴らしお申し付けくださいませ」
そう言って女官が出ていった部屋へ、バルドは入っていこうとする。あたしは嫌な胸騒ぎがして、彼の肩を必死に叩いた。