異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
そうでなきゃ、バルドがあたしと契約を望むはずがない。あたしの価値は巫女の血筋だけ……だから。
それでも。
あたしは、愛がないそういったことをしたくなんてなかった。
きっかけは何であれ、大好きな人に求められる。嬉しくないはずはないけど、彼が必要としているのはあたし自身じゃない。それが悲しくて、悔しくて、切ない。
「バルド……巫女の力が必要なら、あたしはできる範囲で協力する。だけど……こんなのダメだよ。あなたはアイカさんがいる。愛するひとに誤解をさせたらいけないでしょう?
お願いだからどいて……あたしはパーティーに戻るから」
彼の黄金色の瞳を見上げながら、一生懸命ない頭を振り絞って説得する。
「こういうのはやっぱり、愛がないと虚しいだけだよ。お堅いかもしれないけど……や、やっぱり。将来を誓う恋人とか夫婦でないと。だ、だって……こ、子どもだって……可能性があることだから。感情とかに流されてしちゃいけない」
あたしが必死に説得しているのに、どうしてだろう? 言葉を重ねるごとにバルドの瞳の奥に揺らめく何かが勢いを増すのは。
「だから、ね? バルドもちゃんとアイカさんを正妃にするために、こんなことしてる場合じゃないよ」