異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……言ったはずだ。アイカは関係ない、と」
「えっ……?」
バルドがキッパリと言い切ったことが信じられなくて目を瞬くと、すぐ近くにあった彼の唇が重なる。
二度、三度。軽く触れるだけのキスをしたバルドは、感情が抜け落ちた目であたしを見た。
「……他の王子か?」
「え?」
バルドが何を言い出したのかがわからない。他の王子って? とキョトンとしていると、彼の顔が顎の下に落ちる。
「痛っ!」
また、チクリと鋭い痛みが首筋に走って。その痕をバルドの唇が落ちていく。
「他の、王子にやるのか?」
「いみ、わかんない……っ!」
本気で理解できないのに、バルドは再び首筋に歯を立てる。本格的でないとはいえ、うっすらと血が滲む程度の力で噛まれて。ぞっと背筋が寒くなる。
「バルド、お願いだからやめて! ちゃんと話……」
全てを言い終わらないうちに、悲鳴に変わる。彼の唇が胸元に落ちてきたから。