異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「……ってえな。何も十回もぶつことないだろ、暴力女」

「何が暴力女よ! 覗きをしたヘンタイ男に言われたくないわ」


両方の頬を腫らした男がぶつくさ文句を言うから、あたしはがーっ! と言い返した。


「あれは、たまたまだろ。オレも見たくて見たんじゃねえ。だいたい、見せれるほどのもんじゃなかったろ」


そう言ってわざとらしく両手を自分の胸に当てて膨らみを作るから、頭に来たあたしはやつの下唇を掴んで引っ張ってあげた。


「いただだだ! 口を引っ張るな!!」

「あ~ら、余計なことを言うこんな口、要らないでしょ? 取っちゃっても別に困らないよね~?」


あたしがにっこりと笑い引っ張る指に力を込めれば、ひきつった顔の男は渋々謝ってきた。


「ひてて! ふまん。見たのふまん! だからやめへ!!」


いくら体を鍛えようが、唇までは鍛えられないだろうな。とあたしはコイツの弱点リストに追加しておいた。今度失礼な態度を取ったらまたこのお仕置きをしてあげよう。


そんなやりとりを、傍らの皇子様はニコニコと見守ってた。


「ハルトと和は仲がいいですねえ。短時間で打ち解けられて何よりです」


『どこがっ!?』


あたしとハルトの声がハモったのは、偶然じゃない……たぶん。



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