異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
あたしがずっとずっと止めてと言い続けているのに、バルドはやめてくれない。身勝手で強引な彼の行動に、だんだんとムカついてきた。
さっき、他の王子の名前を出したら反応があった。なら、それを利用して止めようと口にする。
今は、バルドを止めるだけで精一杯だった。彼がやめてくれるなら何であれよかっただけ。
「――セリス王子なら、こんなことしないよっ!!」
心の底からのあたしの叫びに、バルドの動きがようやく止まる。やっぱり効果があったと安堵して、彼が正気に戻ってくれた?と期待を込めて見上げたんだけど。
その黄金の瞳には、底冷えするような光がたたえられていた。
「……にするな」
「……え?」
かすれるような低い低い声は、全てあたしの耳に届かない。だから、彼の拘束がより強まって、胸元のリボンが全て抜き取られた現実に。頭がついていかない。
バルドの口元が歪み、彼が笑ったのだと知る。ほの暗くて、どこか闇を感じさせるものだった。
「……オレを、好きな男だと思えばいい。その男を想像しながら抱かれろ」
「なっ……何を言って……」
好きなのは、バルド。あなただけなのに。どうしてそうなるのかわからなくて呆然としているうちに、肩がむき出しになる。
こんなの……嫌だ!
瞳から、ボロッと大粒の涙が溢れた。