異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《ナゴム、生きておるか?》
侍女を伴ったヒスイがやって来たのは、うつらうつらと微睡み始めた頃で。彼女の騒がしさに一気に眠気が飛んだ。
「生きてるに決まってるでしょ! 縁起でもないことを言わないでよ」
ロゼッタさんからの情報で知った。ヒスイがかき回したせいで、バルドとの関係がややこしくなったって。 だから、ついつい苛立ちのまま彼女に怒鳴り付けた。
《まあ、そう怒るでない。わらわが手を出さずとも、いずれこうなった》
ヒスイは悪びれるふうもなく、大きなあくびをしながらソファにぽすんと座る。
《やれやれ、淑女というものは疲れる》
「どこが淑女?おまえ、腹黒くて嫌いだ」
《人に嫌われたところでどうとも思わぬ。好きに思えばよいぞ》
ロゼッタさんが睨みを利かせていても、ヒスイはどこ吹く風でドレスからいつもの服に変化させた。
《そういえば、バルドはアイカのところへ行ったそうだな》
「……そう」
姿が見えないと思ってたら、やっとアイカさんのお見舞いにいったんだ。彼女は本当に体調不良だったから、そちらへ行くのは当然だ。あたしだって行けって散々言ってたんだし。
だから……
寂しい、だなんて。思っちゃいけない。バルドのそばにいるべきはアイカさんなんだから。
ぐっと布団を握りしめて、熱くなる瞼をギュッと閉じた。