異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



《そうか?》


ヒスイはよいしょ、と腰を浮かすと、手のひらを翳してあるものを浮かせる。そして、それはあたしの胸元にポタリと落ちた。


「……これ、なに?」

《ドアの前に置いてあった。衛兵に訊けば、知らぬうちに置かれたみたいじゃな》


ごそごそと起きて手元を見れば、そこにあったのは青いリボンで結ばれた花と、ベリー類に似た野いちご。


《毒は入っておらぬから安心せよ》


「うん……」


たぶん、お見舞いだと思うけど。名前も告げずメッセージもない。一体誰だろう? 疑問に思いながらも、ちょうど酸っぱいものが欲しかったから。ありがたくいただくことにした。


「……おいしい」


篭に盛られた野いちごは熟れていて、とっても甘くて酸っぱい。美味しいからロゼッタさんとヒスイにも分けて、みんなで食べた。


「この花、花瓶に入れて飾るね」


ロゼッタさんが気を利かせて花を花瓶に生けてくれた時、解いたリボンを渡してくれたけど。そのリボンを見て、ハッと思い出した。


このリボンって……もしかしなくとも、あたしの?


まさか……花と果物を贈ってくれた人は。


もしも、そうだったなら。


あまりにあり得なかった。あたしはリボンを胸に抱いて静かに涙を流すけど。悲しみじゃなく、嬉し泣きだった。


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