異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
あたしが体調不良ということで、夜になって王妃であるセリナや王太子妃のユズまでお見舞いに来て賑やかだった。 挨拶もできなかったお詫びをしている中、意外なひとの訪問を受けた。
「ナゴム、アイカって女が来た」
「え!?」
ロゼッタさんが取り次いだ訪問者の名前に、一瞬耳を疑う。
アイカさん、って。あのアイカさんだよね? ハルバード公爵夫人で、バルドの好きな幼なじみ。
なんで? 彼女は体調不良で部屋で休んでたはず。あたしと違って本物の病気だから、こんな短時間に回復するなんてあり得ない。
「えっ……と、体は大丈夫そう? なら、入ってもらっても構わないけど」
「別に、見たところぴんぴんしてるけど。わたしはなんか、嫌な感じがする。ホントに会うのか?」
ロゼッタさんまでもが、眉を寄せてアイカさんを毛嫌いする。
彼女は嫌いな人はハッキリ嫌いと言う潔さがある。苦いものを飲み込んだような顔は、彼女を嫌いだと告げてた。
(なんでみんながみんな、アイカさんをそんなに悪く言うんだろう? まだそんなに話したりしてもいないから、あたしには判断がつかないのに)
あたしが許可をしたところ、侍女を伴ったアイカさんが部屋に入ってくる。
その瞬間――部屋のなかいっぱいに、甘ったるいような。頭が痺れそうな香りが広がった。