異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「体調が良くなってよかったですね」
「はい、ありがとうございますユズ様。ティオンバルト殿下にも優しくしていただけて。感謝いたしますわ」
「……ティオンが?」
ユズがほんの微かに眉を寄せる。きっとよく見ないとわからない程度には。
「はい。この宮殿にやって来たすぐ後のことです。わたくしが倒れそうなところを、お優しく抱いてくださって。お部屋まで連れていってくださいましたの。お薬の手配もして下さいまして……お礼をお贈りしたいのですが、ティオンバルト殿下のお好きなものをお伺いしてよろしいでしょうか?」
潤んだ瞳で頬を染めたアイカさんは、「ティオンバルト殿下は本当にお優しく美しい方ですのね。お逢いすれば、いつもわたくしを気にかけて下さいますの」と囁くように、色めいた吐息で呟く。途端に、ユズの顔が強張ったのを感じた。
……はあ、とあたしは初めて聞く話にそうですか、って印象しか持てない。
「でも、セリス王子殿下もとても紳士的で決断力がおありですわ。ひとえに王妃様が素晴らしいご教育をなさっておられるからですのね」
「あら、ありがとう。そこまで褒められると何だか怖くなるわね」
アイカさんの賞賛の言葉を、セリナはサラリと流し失礼ない程度には返す。さすがに年の功と言うべきか。
……言ったら確実に殴られるから言わないけど。
「御弟のヒルト殿下は明るく場を和ませてくださいました。わたくしが異国で心細く、気分が塞いでると気づいて……とても人の心に寄り添える方なんですのね」
アイカさんのお喋りは止まない。そこで、ふと気付いた。