異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第22関門~変わっちゃいましたねって言われても。
歓迎パーティーから一夜明けて、新しい条約締結のための交渉と会談が始まった。
それは貿易と関税に関する通商条約の基本部分と、戦争を起こしたり攻め込んだりしない、という不可侵条約。
数年前にあったディアン帝国とセイレスティア王国間の国境戦争。歴史で勉強した限りでは、帝国と王国の間では何度も戦争が起こってる。
ましてや、数年前の戦争ではセイレスティア王国の王太子と第二王子が命を落とす、という悲劇が起きた。だからこの二国は遺恨も憎しみもあるはずで。こんなふうにほっこりと親睦を深めるのは違和感があるというか……。
「あのう」
青空が広がり爽やかな風が気持ちいい午後。セイレスティア王国用の迎賓館は、白いバラのアーチが綺麗。その近くに座ったあたしは、白いテーブルの向かい側に座るユズに遠慮がちに声をかけた。
「ん、どうかした?」
キキさんが淹れたお茶(緑茶)をティーカップでいただきながら、ユズはこちらへ目を向ける。
「あ、もしかしてパウンドケーキが欲しかった? ごめん、ごめん! こっちは抹茶を入れて焼いた自信作なんだよ」
「あ、美味しそう! いただきま~す」
ユズ自ら切り分けてくれた抹茶のパウンドケーキは、抹茶独特のほろ苦さと糖蜜の甘さが絶妙なハーモニー。しっとりした生地は柔らかくふわふわで……って。
「美味しい。けど、違う~!」
しっかりとパウンドケーキを完食してから、あたしはユズに叫んだ。