異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
午後3時のティータイム。セイレスティア王国というより、ユズがオヤツ欲しさに習慣にしたみたいで、あたしもお相伴に預かってる。
王妃であるセリナも招待したけど、さすがに国王陛下の次に身分が高いだけあって、公務も政務もてんこ盛り。一分を争う過密スケジュールで、お昼さえ馬車の中で取るらしい。
友達のセリナが忙しいのにのんびりする罪悪感はあるけれど、正式な妃でも貴族の姫でもないあたしに出来ることは少ない。午前はユズ達と連れだって城下町の施設を慰問したりしたけど、午後は好きにしていいと放っておかれた。
もちろん、訓練や勉強は欠かさない。その合間にユズからティータイムのお誘いがあって、今に至ります。
ユズは手作りのお菓子を焼くのが得意らしくて、迎賓館の厨房を借りてあれこれ作ってると笑った。
「美味しい。パウンドケーキはすっごい美味しい! ほっぺたが落ちそう……だけど。あの……ユズも知ってるでしょ? ディアン帝国とセイレスティア王国の過去の確執を。それなのに、あたしと仲良くして大丈夫なの?」
「うん、知ってるよ。ティオンから聞いてるから」
ユズはそう言いながらドライフルーツとナッツを入れたクッキーを勧めてくる。くっ……明日の体重が怖いわ、と思いつつ甘い香りの誘惑に負けて、ついつい摘まんでしまいました。