異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。




過去に囚われていては何も生まれない……か。


1年近く異世界で苦労をしてきた先輩の言葉は、ズシンと重く胸に響いた。


あたしは、どうだろう? 出来る範囲で秋人おじさんを捜してきたけど、そればかりに囚われてしまってないかな?


ハルトが伝えてくれたおじさんのメッセージ。


“……和、だめだよ。自分の可能性を狭めてはいけない”

“もう、いいんだ。和、あかの他人のために、君が苦しむことはない。ヒトミだって悲しむだろう”


バルドの介入で全てを聞くことは叶わなかったけど、おじさんはあたしを日本へ帰したがっているように見えた。


もしかしなくともおじさんは、あたしが日本で普通の女の子として暮らして、そして人並みに幸せになれって言いたかったのかもしれない。


あたしだって最初からそのつもりだったし、今も望みは変わらない。


でも……。


「この世界も、生きているんだよね」


あたしが漠然と考えていたことを、ユズが言い表してくれた。


「日本と同じ。喜怒哀楽がある人たちが生きていて……何も変わらない。あたしは、ここでここの人たちの為に生きるって決めてるから」


ユズの晴れ晴れとした表情は、確固たる意志が宿ってる。あたしは、そこまで強い決意をして何かをしたことがあったかな?


自分では流されていないつもりでも、案外そうじゃないかもしれない。


もっと、考えなきゃいけない。大好きな人の役に立てるように。あたしができることがあれば、彼のために何かをしたいから。


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