異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「あんたもお人好しすぎっしょ? もうちっとビシッと言ってやった方がいいって」
つやつやの黒髪をサラリとかきあげる和風美人の芹菜さん……そう言えるのは、自信がある人だけですよ。
「そうかもだけどさ~やっぱ、養ってもらってる立場だし……あんま強く言えないよ」
「やれやれ……」
芹菜さん、呆れたように眉をハの字にしても、あなたはなんて美しいのでしょう。 くうっ……美人は得ですな。
「いつも思うけど、あんな家に厄介になる必要ないでしょ? 和なら引き受けてくれる親戚がいくらでもいたっしょ」
「……うん」
芹菜の言うことももっともだ。何であんな家族の世話を焼く必要があるのか……自分でも疑問に思うけど。
でも、ね。
あの家は、秋人(あきと)おじさんが生まれ育った家。母の弟だった、年が離れたおじさん。あたしをとても可愛がってくれて、生まれる前に父を亡くしたあたしには父がわりでもあったけど。
おじさんは、あたしが8つのころに消えたんだ。
そして、翌年後を追うように母が亡くなり。母の妹だったおばさんが引き取ってくれたけど。おばさんは半年後に亡くなり、あたしはこの義理の家族のまま暮らしてるけど。その時から家政婦兼学生の毎日が始まった。
中学生の時は新聞配達したりして稼いだけど、高校に入った途端に月6万の食費を請求されるようになった。もちろんお小遣いはないから、バイトをして食費を入れればほんのちょっとしか残らない。それを教材費やお小遣いに当てるけど、最近はリカにたかられ懐がかなりピンチなんだよね。