異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「本当に、ユズがいてくれてよかったよ。あたしだけだと、たぶんそんなに大したことできないから」
「そんなことないよ。あたしだって、和と話せて嬉しい。あたしは日本に帰れないから……同じ出身の人が同じ世界にいてくれるだけで、すごく安心出来るもん」
ユズに体を寄せてずいずいと顔を近づければ、若干引き気味……というがドン引きの彼女は、それでも不安な気持ちを漏らしてくれた。
「それなら、セリナだって同じだよ。あたしの友達で性格のよさは保証できるし。今回の件で仲良くなれたんだから、もっと友好を深めるのをおすすめしておくよ」
あたしがいつまでこの世界にいるのか、については言えなかった。いくらユズに同情したところで、その場しのぎの嘘をついたり無責任な約束はできない。
あたしがいつまでいるから、また会おうねって。本当は言ってあげたい。
でも……。
ユズはちゃんと愛され、必要とされてここにいる。しっかりした絆や理由があるなら、きっと悔いはしないんだろうけど。
あたしは……
愛されてもいないし、特に必要ともされてない。引き留められる理由もなくて。ユズやセリナのことがあっても、この世界で生きていくには理由が弱い。
何より。あたしを育ててくれたおばさんや、お母さんのお墓は日本にある。他人との縁が薄いあたしは、せめて2人の供養を忘れたくなかった。
特に、お母さんは本人にとって異世界である日本で亡くなって。お墓はあたししかお参りしない。他人からすればたかがそれだけの理由でも、あたしにとってはすごく大切な理由になってる。
あたしだけは、お母さんが日本で生きていたことを忘れたくはなかった。