異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「そうだね。セリナ王妃様にはとてもよくしていただけて。こう言っちゃ失礼かもしれないけど、なんだかお母さんみたい」
「……そうだね」
王妃のセリナは今40を過ぎてるから、あたし達の親と同世代。会うたびに軽口の応酬があるからついつい忘れがちだけど、壮年と言っていい年齢。健康に気をつけていても、体のあちこちにいろんな不具合が出る年か……。
そう考えるだけで、セリナとの年月の隔たりを感じる。埋められない差は、そのまま彼女との溝になってる。いくら話しても一緒に過ごしたところで、高校生であった“芹菜”とは違う。
「ユズ、時々でいいからセリナと会ってあげて。きっとセリナもユズを可愛がってくれると思うよ」
セリナは何の取り柄もないあたしの友達をしてくれていたほど、懐が大きくて面倒見がいいひとだ。きっと、ユズのことも見捨てたりせずにいてくれる。
ずるいかもしれないけど、あたしが居なくなった後でユズとセリナが仲良していれば、2人とも心強いんじゃないかと思うから。
あたしは、きっとこの世界からいなくなる。だから、発つ鳥後を濁さずで、何の心配事もなく綺麗に消えたかった。