異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ところで」
うおっほん! とユズが咳払いをすると、ちらっとライベルトを見遣る。彼は黙って後ろに下がり、やや距離を取った……って。なんで?
あたしの護衛であるロゼッタさんは特に指示もなく、彼女はそのまま後ろに控えてる。
そして、ユズは声をひそめて彼女から顔を寄せてきた。
「で?実際はどうなの?」
「は?」
実際はどう、って。一体何の話ですか? 主語がないから意味がワカリマセ~ン!
「あの~何がどうって? 主語も単語もないから、答えようがないんですが」
あたしが当然の疑問を口にすれば、ユズは両手を口元に当てて身悶えてますよ。ますます意味不明。理解不能。
「んもう、そんなの。女の子の間で話す話題と言ったら、決まってるじゃん!」
「……って言われましても。あたし、友達少なくて義理の家族にこきつかわれて、普通の女子高生とは言えなかったし……」
悲しい現実を言えば、ユズも遠い目をして呟いた。
「それを言うなら、あたしだって。友達は鈴香しかいなかったなあ。カレシいない歴=年齢だっだから、人並みの女子高生ライフは堪能したことはなかったし……」
「は~考えてみたら、あたしの人生ってなんだろ?」
「ふう……やっぱし灰色の学校生活しか思い出せない……」
お互い、ついついポンと肩を叩きあう。負けるなよ!人生いろいろあるさ。との意味を込めて。
ご~ん……と除夜の鐘のような重く高い音が、あたし達の間に響いたかもしれない。