異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「それなら、ヒスイがべらべら喋ってたよ」
(あんの女あああっ!!)
ユズの情報提供によって、最悪な噂が広まってると知りましたから。あたしの額には確実に青筋が立ってるでしょうね、ええ。ピクピクとこめかみが動いてますから。きっと般若のお面のような顔になってるでせう。
殺、という物騒な単語があたしの胸によぎったのも。たぶん気のせい。きっと。
「ま、まあ。あからさまに話す人はいなかったから、紳士淑女の面々だとあんまり広まらない……って。下手な慰めしかできなくてすみません」
ドンマイ、と言いたげにユズがあたしの背中を叩く。今度は励ましですよね……。
「終わった……あたしの人生、詰んだ」
全身から脱力してテーブルに顔を載せてると、ま、まあとユズがまだ慰めてくれる。
「人の噂も四十九日って言うじゃん。少ししたら収まるよ」
「ユズ、四十九日って法事の日数だよ……それを言うなら、人の噂も七十五日でしょう……」
「……」
ユズが笑顔のままフリーズする。
なんか、四十九日ってビミョーに不吉な気がするんですが。
再び、あたしたちの間に鐘の音がゴーンと響いた。