異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……う~……和だからぶっちゃけるけど。まあね」
さすがに王太子妃ともなると、出先でのプライベートであろうと、異国の賓客を悪し様に言えないらしい。
何だか窮屈だけど、ユズはそれを承知で妃になったんだ。ほとんど同い年なのにすごいと思う。
「やっぱそっかぁ」
あたしは彼女をどう言い表して良いか悩んだ。だけど、最低限伝えるべきことは話しておく。
「あのね……昨夜お見舞いに来てくださったのはディアン帝国のハルバード公爵夫人で、アイカさんって言うの。ライネル公爵とアイカさんとバルドの三人は幼なじみで、とっても仲がよかったって」
「へえ。けど、なんで公爵夫人が夫もなしにセイレム王国のパーティーに出てたの?」
「公爵がセイレム王国に別荘を持ってるかららしいよ。なんでも、母方はセイレム王国の貴族でそちらの筋から相続したとか。で、気候が良くて医療が発達したセイレム王国で、体が弱い夫人が療養中にたまたま招待されて、みたい」
なるほど、と一応納得したらしいけど。ユズはなにか引っかかることがあるらしく、腕を組んで考え込んだ。
「でも、なんかおかしくない? いくら幼なじみでもさ。和って婚約者がいるのを承知で、夫の代わりに独身の皇子にエスコートさせるなんて。貴族としても、女としても、人間としてもどうかと思うよ」
眉を寄せたユズは、レモンティーに入れたレモンをかじって梅干しみたいな顔になった。