異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「やっぱそうなのかな?」
「そうだよ!絶対、おかしいって」
梅干しから復活したユズは、バン! とテーブルを叩く。ガゴン、と音がして木製のテーブルが真っ二つに割れたのは……たぶん気のせい。(古くなって朽ちた素材の)木の……せい。
ユズは開き直って椅子から立ち上がると、拳を握りしめて勢いよく突き上げた。
「だいたい、バルド皇子もなんでへいこらその女に肩入れするのよ。大切なのは婚約者でしょうが! 和もそう思うでしょ!?」
「へ、へい」
思わず昔の人間みたいなおかしな返事になってしまうくらい、ユズの鬼気迫る様子に飲み込まれてた。
「だいたい、なんなのよあの女は。ティオンがやさしい? そんなの当たり前! 外交上無下にできない相手なら、誰だって優しく紳士的に扱ってくれるに決まってるじゃない!
それが、なに? 体が弱いからって、あのへったくそな演技!バッカじゃない!?」
……前言撤回。ユズ、めちゃくちゃ溜まるものがあったようです。
まるで、居酒屋でクダを巻くおじ様なみ。今、ビール瓶や日本酒を持たせたら似合いそう。
「あたしが許せないのは、キキのいる前でライベルトを誘惑しようとしたこと! キキが体調を悪くしたのは、たぶんあの女が持つ香りのせいなのに。心配するふりして倒れるって。わざとらし過ぎない!?」
「え、ユズも気付いたの?」
「もちろん! キキの気持ちはとっくに知ってる。だから、ライベルトを煽るけどなかなか……」
「え? それもあるけど。あたしは香りについて訊きたかった……」
「……あれ?」
お互い顔を見合わせ、やっと話の食い違いを知る。
ご~ん……。