異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。




すると、突然アイカさんがうつむくと、口元に手を当てて小さな肩を震わせた。朱に染まった頬に、潤んだ瞳。


泣いてる、と誰もがわかる反応だった。


「お、お邪魔してごめんなさい……そうですわよね。お楽しみ中に、突然入り込んで図々しかったですわよね。
わ、わたくしはただ……白いバラのアーチがどれだけ素晴らしいか……拝見したかっただけですのに……ごめんなさい」


ポタリ、と涙が頬を伝い柔らかい草の上に落ちる。遂には手袋をした両手で顔を覆い、嗚咽を漏らし始めたアイカさん。それを見た周りの男連中から、射殺さんばかりの視線を幾つも頂きました。


「なんて女だ。アイカさんがバラを見たいだけなのに、底意地が悪い」

「見たことがない顔だが、地味でパッとしないからおそらく侍女だろう。たかが侍女風情が!どちらが図々しいのか。我が家の力で思い知らせてやる」

「アイカさんはきちんとティオンバルト王太子殿下とセリス王子殿下のお許しをいただいてる! 無礼な態度は許されるものでないぞ」

「きっと、自分の地味でパッとしない容姿を顧みて、愛らしいアイカさんを妬んで……みっともない嫉妬混じりなヒステリーをぶつけてきたんですよ」

「もしかしなくとも、貴重な恋人か片思いの相手がアイカさんに惹かれたからふられて」

「あり得ますな。あの容姿と体では、どんな男だとて引っかかりますまい」


……おおいっ! そこ。勝手にストーリーを作り上げるな。なんであたしが彼女にモテない八つ当たりしたり、振られた腹いせに意地悪したことになってんの?


ってか……


『あの胸の小ささではね……』


全員が全員、気の毒そうな哀れみの瞳であたしを見て、しみじみとため息つくな! ケンカ売ってんのかああっ!!


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