異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「なんて無礼な態度だ!」
「そうだ! アイカさん、あの女こそつまみ出しましょう」
「我が家の力で衛兵に捕らえさせましょう。地下牢に1日放り込めば、己の立場をわきまえるようになりましょう」
ドカドカ、と土を踏み鳴らしながら衛兵を従えた男たちがこちらへ歩いてくる。それでもまたアイカさんのもとに、十人近い貴族と衛兵や付き人が残ってる。
「い、いけませんわ。皆さま……わたくしのために、そのような乱暴なことを……ああっ」
ふらり、とアイカさんが体をよろめかせ、近くの男性の胸に受け止められたまましがみつく。
「ザイード公爵さま、どうかお止めになってください。わたくしのために……そのようなことを。許されませんわ」
「ああ、アイカさん。あのような女にまでなんと慈悲深い。いいのです。私の力であのような無礼な女などいくらでも……」
父親ほどの年齢の男性が、デレッと顔を弛ませてるのは見たくなかったわ。そう思いながらやって来た一団を、冷ややかな目で見る。
衛兵の人に後ろ手に腕を拘束された瞬間、凛とした声が響いた。
「お止めなさい! ここはセイレスティア王国に許された滞在の地。いわば、セイレム王国の法の及ばぬ、治外法権の場所。セイレスティア王国とディアン帝国に対するあなた方の横暴な振る舞い、しかるべき場所へ出て公的な対応をなされたいのですか!?」
ユズが一団の前に立ち、彼らを見据える。その目には王太子妃の誇りと尊厳が感じられた。