異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ゾクッ、と。背筋に寒気が走った。なんなの……これは!?
《バルドだって、アタシを愛してるって。一緒にいたいって言ってくれた。あいつはいつだってアタシに夢中! あんな大したことない女が、バルドの心を掴めるはずないのにね。あ~見ものだわ。あの女、バルドが好きなんだよね。おっかし~超ウケる!
バルドはアタシが他人の子どもを身ごもったって、結婚しようって。一生子どもとともに愛するって言ってくれたのよ。それだけ強い愛に入る隙があると思ってんの? 笑える~》
ズキッ、と。胸が痛む。アイカさんの声はいちいちもっともすぎて、あたしには反論できる材料がない。
そっかぁ……やっぱりバルドはアイカさんに告白したんだ。一緒にいたいって……プロポーズだよね?
ポロリ、と涙が一粒だけ流れたけど。すぐにゴシゴシと拭ってあたしは微笑んだ。
「アイカさん、わたしはちゃんと立場をわきまえています。生意気を言ってごめんなさい。ですが、どうかバルド皇子殿下の評判を落とす真似は謹んでください」
それだけ告げると、後は楽しんでくださいとユズに挨拶をして庭園を後にする。
そのあと……。
「なに、あの女余裕ぶりやがって」とアイカさんが歯噛みしたことを、あたしは知らなかった。
「バルドが……変わったのはあの女のせいか。バルドは今まであんな目でアタシを見なかったのに……チクショウ! あの女……ぜってぇ潰す。その血と命を、“あれ”の生け贄にしてやる」