異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ひどい……」
思わずそんな呟きが出るほど、水晶宮殿は荒れ果てた様相を呈してた。
あの、白鳥と喩えられるほど美しかった建物はあちこちが破壊され、炎にまかれ燃え上がる。安らぎになった庭園は黒焦げになったり、炎に飲み込まれ見る影もない。あちこちに動かない体が横たわり、血の痕が散っていた。
「うっ……」
他にも絶筆に尽くしがたいあまりに陰惨な光景に、こみ上げる吐き気を必死に抑えた。
時折、黒い影が踊りこちらへ攻撃を仕掛けてくる。カイル王子とハルトが剣を振るい、セリス王子の攻撃魔法で撃退しながら、まだ無事な大広間に向けて馬を走らせた。
セリス王子とレヤーの結界と防御魔法がかけられているから、こちらへ直接的な被害はないけど。あまりにも多くの刺客がいて、こちらの消耗も激しい。
「ナゴム、顔伏せて!」
「っ!」
あたしのすぐ真上で、ガギンと派手な金属音が響く。おそらく、ロゼッタさんが敵の武器を受けたんだろう。彼女が跳ね返すと、刺客は一旦飛び退いたけど。また円盤みたいなものに載って飛びながら追撃してきた。
「和さん、左です!」
レヤーが咄嗟に叫んだから、左手に持ち替えた剣を構える。飛んできたのは丸い形状の刃で、それを剣で叩き落とした。
「なんで、結界が効かないの? 物理的な攻撃ははねかえすんじゃなかった?」
「【闇】に属する攻撃には無効なんです。私はどちらかと言えば大地……命寄りなので」
レヤーの言ってる意味はよくわからないけど、つまりは闇属性は相当強くて厄介だって認識すればいいのかな。