異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《わらわはあの炎がこれ以上広がらぬよう食い止める!後は自力で動け!!》
「わかった。こっちは大丈夫だから、お願いね!」
ヒスイもあの黒い炎がヤバイと解ったのか、あたしから離れて湖に飛んでいった。早く事態を収めて彼女を助けないと……。
気のせいか、炎にまかれた場所から黒い霧が立ち昇ってる。それは無事な植物を枯らし、地面がドロドロとした粘土の、底なし沼のようなものと化していく。
止まらない襲撃に、だんだんと疲労の色が濃くなる。大広間に近づこうとしても、黒衣の刺客と操られた騎士や兵と戦わなきゃならなくて。容易に近づけない。
一進一退の攻防を続けながら何とかジリジリと前に進む中、それは聞こえてきた。
「…に…え……」
(えっ?)
聞き覚えのある、声。
これは……この声は。
「レヤー、止まって!」
あたしが叫んだとほぼ同時に、レヤーの脚が急停止する。すぐに飛び降りると、声がした方へ向かって走った。
「ナゴム!」
「先にいってて!」
自分の行動でこれ以上迷惑をかけられないから、あたしは手を振ってレヤーに叫んだ。その後は目的の人を捜して、刺客と剣を交える。
「日本の庶民の力を舐めるな!」
なんか訳がわからないことを叫びながら、剣の柄で刺客を昏倒させつつ、茂みの中で見つけた。
やっぱり。
茂みの中で踞っていたのは、セリス王子の弟でセリナの息子のリデル王子だった。