異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
彼は軍服のあちこちが切り裂かれ、そこから血が滲んでる。
けど、一番ひどいのが肩の傷。袈裟懸けにザックリ斬られ、お腹の辺りまで達してた。
出血の多さからか、顔色は真っ青で唇が紫に近い。ガタガタと震えるのは、失血による体温低下のせいだろう。
意識がほとんどない彼は、ただひたすらか細い声で両親と兄を呼んでた。
「はは……うえ、ちちうえ……あ……にう……え」
「リデル王子、しっかり! あたしが助ける。意識をしっかり保って!」
あたしは彼の頬を軽く叩いて刺激で意識を保つようにしながら、とにかく出血を止めようと腰にあったカバンから布を取り出した。これだけ広い傷口だと足りるかわからないけど、とにかくやるしかない。
焦るな、と思うのに。心臓が暴れて手に汗が滲み手が滑る。自分の着ていた服でリデル王子を覆い、なるべく体温を保つようにする。この後は……と必死に考えても、思い浮かばない。
「リデル王子、助けを呼んできますから。気をたしかに……大丈夫、絶対に助かりますから」
朦朧としたリデル王子の瞳に、大丈夫と言い聞かせながらそう話す。
大丈夫、絶対に大丈夫。きっと彼は助かる。
レヤーを引き留めればよかった、と後悔しながら。せめて誰かいないか、乗り物がないかと探す。
けど、後ろに人の気配があって。ハッと振り返ると同時に、剣を抜いて応戦した。