異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第24関門~なくしたもの、うしなわれたもの。
「ナゴム!」
「和さん!!」
暗い炎に囲まれた夜。誰かが、あたしの名前を呼んでる。
けど、あたしのなかに響かない。意味がある音として、頭が認識しない。
あたしの目の前に、銀色がある。太陽の光の中ではいつもまばゆいほどに輝いて、それに似合う緑色の澄んだ瞳は……今は、閉じられたままだ。
彼はあたしを庇った姿勢のままで、力なく身体を預けてるから、重い。
「ね……ねえ、セリス王子……もう、大丈夫だよ。あなたが護ってくれたから……あたしは大丈夫、ほら。もう敵はいない、あなたが強いから……だから、もう……」
おかしい、よね?
いつもとおなじで、あなたの身体はまだ暖かい。だけど、あたしが呼んでもあなたは答えてくれない。
いつもだったら、あったかい微笑みで応えてくれるのにね?
「ねえ、もう……いいよ。ほら、早く……リデル王子を助けなきゃ。それからセリナと父上の国王陛下を助けて、みんなが大丈夫って……ねえ、セリス王子」
どうして、だろう。
血が止まるようにしたはずなのに、なんでセリス王子は動かないの?
「ナゴム! もうやめろ。手遅れだ……」
誰かが、おかしいことを言ってる。手遅れって、何が?